私達は22年間において日本山岳耐久レース長谷川恒男CUPを開催してきました。
この大会を開催する実行委員会を法人化し、一般財団法人日本山岳スポーツ協会を設立し、トレイルランニング大会の運営業務の自立の為の改革を進めきました。
世界的に有名なニューヨークマラソンやロンドンマラソンの大会運営は独自の運営法人を設立して運営しています。日本では東京マラソンも大会運営に係わる法人として東京マラソン財団が設置されています。これらのマラソン大会の競技主管や競技主催は陸連であることは変わりありません。日本山岳耐久レースにおいても競技主管は東京都山岳連盟日本山岳耐久レース委員会で進めてきました。
これと平行して(社)日本山岳協会競技部の中にトレイルランニング小委員会を創設参画してトレイルランニングの各種研究を行ってきました。
小委員会では7年に及び研究と活動を続け、用語の統一、大会の基準作り、選手育成と強化普及、公認指導者・競技力向上指導員の養成カリキュラムの研究、国体山岳競技として種目創設のための研究等々のアカデミックな研究を進めて毎年、全国競技委員総会において日本におけるトレイルランニング指針等を提起してきました。
ハセツネCUPにおける競技部門を担っているのが都岳連日本山岳耐久レース委員会です。 トレイルランニングの専門家集団として専門性の高い競技の主管を担ってきました。
この位置付けにより(公社)東京都山岳連盟日本山岳耐久レース委員会が競技主管として大会を支え実行委員会より主管料を徴収しています。
この様に大会を主催するのは競技団体では無く、大会運営を委託して名義主催し、競技を主管していくのが多くの競技団体の常識となっています。
大会運営業務に対して大会競技主管とはその大会のトレイルランニング競技を責任を持って行える団体です。日本においては山岳競技の中央競技団体でありトレイルランニングの競技主管する日山協トレイルランニング小委員会がこれにあたります。
8月2日、(公社)日本山岳協会がトレイルランニング小委員会を通して全国に呼びかけて岸記念体育会館において「日本トレイルランニング会議」通称トレランJAPANが立ち上がりました。
この立ち上げに中核を担ってきた私達は、全国規模で行われるトレイルランニング大会の競技主管を行うのが日本トレイルランニング会議であるという考えが競技における一般論だと考えます。
日本トレイルランニング会議における今後の具体的活動について
トレイルランニングアカデミック委員会を立ち上げ、次の5つの(小)委員会に分けて、活動して参ります。
1. | 競技規定委員会 | ||||
内容 | トレイルランニングの定義及び、規定の創設。 | ||||
トレイルランニング用語の統一。 | |||||
陸連競技規則の山岳競技との棲み分け。 | |||||
・ | 規定の目的と理念(公平・公正、安全、自己の限界への挑戦等) | ||||
・ | 進め方(主要トレラン大会のレギュレーション調査、他の競技との棲み分け) | ||||
・ | 規定のあり方(最大公約数と最小公倍数、審判の権限等) | ||||
・ | 規定の内容(役員、組織、審判資格、役割、補給、補助行為等) | ||||
x | |||||
2. | 大会基準・開催規則委員会 | ||||
内容 |
トレイルランニング大会の基準作り(大会規模・人数、シングルトラックの整備のランク付け等) |
||||
・ | トレイル(未舗装)割合による大会のランク付け | ||||
大会開催地域の振興(開催地域行政との連携・地域振興・ふるさと納税等々) | |||||
公認トレラン大会の認定業務 | |||||
・ | 大会コース要件の確定(距離、累積標高差、コースマップの明示、コースの表示等) | ||||
・ | 運営体制の制度化 | ||||
・ | 日山協の大会コース認定と運営体制にかかる認定 | ||||
x | |||||
3. | 公認指導員・審判員委員会 | ||||
内容 | 公認審判員の創出 | ||||
・ | 公認審判員の定義(日山協公認以外の部分) | ||||
・ | 公認審判員に問われる資質項目とは | ||||
・ | 他競技で参考になる公認審判員の情報(トライアスロン、陸連、他) | ||||
・ | 審判団の構成と、それぞれの役割と権限 | ||||
・ | 公認審判員養成カリキュラムと運営組織のあり方 等 | ||||
公認指導者・競技力向上指導員の養成のカリキュラムの作成 | |||||
・ | トレイルランニングの普及及び活動中の事故件数を数字的に把握 (公認指導員が必要である背景を証明、カリキュラムでも触れる。) |
||||
・ | 公認指導者が習得しておくべきこと | ||||
■ | トレイルランニングにおける環境保護のポリシーと技術 | ||||
■ | トレイルランニングの楽しさとリスク | ||||
■ | コーチングに代表されるコミュニケーションスキル | ||||
■ | 具体的な自然環境との向き合い(ルール) | ||||
■ | 一般ハイカーや地元住民を考慮したマナー | ||||
■ | フィジカル面や心理面でのトレーニング論 | ||||
■ | 安全面での技術、装備を使いこなせる技術 | ||||
トレイルランニング資格認定業務及び研究 | |||||
・ | 日本体育協会公認スポーツ指導者(山岳競技−トレイルランニング)認定 | ||||
・ | 大会コースの認定員 | ||||
・ | 大会開催の運営体制に関する資格認定 | ||||
z | |||||
4. | 国体等競技大会委員会 | ||||
内容 | トレラン選手育成と強化普及 | ||||
日本選手権の為の大会の条件整備と選手の登録制 | |||||
日本代表の選定業務と公認 | |||||
国体山岳競技としてトレイルランニング種目創設のための研究 | |||||
都道府県岳連(協会)内でのトレイルランニング委員会設置への働きかけ | |||||
・ |
当面の活動 | ||||
■ | トレラン競技の普及及び啓発活動 | ||||
■ | 国体山岳競技(トレラン)種目創設の研究 | ||||
■ | 各岳連内へのトレラン委員会創設の働きかけ | ||||
・ | 選手の強化普及 | ||||
■ |
ただ速く走り切れるだけではなく、登山に関わる最低限の知識・技術、救急法をすべての 競技者が身に着けていることが理想 |
||||
■ | 各種講習会や岳連を通じて一般競技者への啓発活動を推進 | ||||
■ | 選手・指導員・審判三者共通のカリキュラムを検討する必要 | ||||
x | |||||
5. | 共通カリキュラム | ||||
指導員を想定したカリキュラムの試案 | |||||
◆ | 基礎理論 | ||||
登山とトレイルラン | |||||
トレイルランの医学(障害の予防、救急法) | |||||
登山計画・装備 | |||||
自然保護 | |||||
遭難対策 | |||||
競技、運営 | |||||
指導者制度、指導者の役割 | |||||
法律、保険制度 | |||||
◆ | 実技指導・実習 | ||||
走行技術(出発準備、山のマナー、気候) | |||||
走行技術(走り方の基本、ストック使用法) | |||||
悪条件下での走行技術(夜間・雨天時の走方) | |||||
読図(ナビゲーションと用具) | |||||
補給と給水(食料計画と配分) | |||||
事故発生時の対策(連絡・通信方法とセルフレスキュー) | |||||
遭難対策(悪天時の対処、不時露営) | |||||
遭難対策(搬送・ロープワーク) | |||||
x | |||||
6. | 国際競技・大会・委員会 (委員は海外大会経験者及び語学堪能者) | ||||
内容 | 国際大会の調査・交流。 | ||||
・ | 日本人の海外大会への参戦 | ||||
・ | 国内大会への外国人選手の招聘 |
日本においてトレイルランニングがスポーツとして名実とともに市民権を得て、国民的スポーツへ発展し、国民体育大会への復活やオリンピック競技を目指して活動を進めて行きたいと思います。
文責: 日本トレイルランニング会議 理事長・(財)日本山岳スポーツ協会 理事長
宮地 由文